たくさんの人に買って欲しいのになぜペルソナ作って1人に向けるのか
こんにちは、よしてるです。
きっとみなさんは、「ペルソナを設定するんだよ」「ペルソナ1人に向けて記事を書くんだよ(商品を作るんだよ / マーケティング施策を打つんだよ)」と言われて、「たくさんの人に買って欲しいのになんでペルソナ作って1人に向けるの?」と思ったことがあることでしょう。私も最初はよくわかりませんでした。
そこで今回は、私がライティングやマーケティングを勉強していく上で理解した「ペルソナとはこういうことか」という知見のようなものを共有したいと思います。
目次
ド定番:いったん恋愛にたとえてみよう
ペルソナを設定したほうがいい理由について、恋愛にたとえてみるケースが多いように感じています。確かに、ペルソナ理解の入口とするには恋愛にたとえると理解しやすいところがあります。
意中の相手に気持ちを伝えたいとき、以下の2人を想定してみましょう。
「1人にだけ気持ちを伝える」
「複数の相手に気持ちを伝える」
ちょっと議論の余地のない比較でしたが、1人にだけ気持ちを伝えるほうが好感度が高いですね。
また、以下のような比較もしてみます。
「その人のことを考えて好きそうなものをプレゼントする」
「ネットで調べたおすすめプレゼントに従ってプレゼントする」
後者が駄目だと一概にはいいませんが、前者のほうが喜ばれる可能性は高そうですね。なぜ、前者のほうが喜ばれそうなのでしょうか。
例えば後者では、「女性 プレゼント おすすめ」などで検索して調べて出てきた結果からセレクトすることになるでしょう。あるいは、InstagramやTikTokでインフルエンサーのおすすめを見るようなこともあるかもしれません。
こうして選んだプレゼントは、「女性」や「◯◯代」などのカテゴリでふんわりまとめた最大公約数であり、100人いたら50人は喜んでくれるかもしれません。一方で、意中の相手が喜んでくれるかどうかは怪しいところです。また、喜んでくれるとして、その反応は最大公約数の域を出ないでしょう。
相手のことを考えて選んだプレゼントのほうは、99人には刺さらないかもしれませんが、きっとその人には大きく喜んでもらえるはず。実際にはいろいろな難しさがあるとはいえ、スタンスとしては相手1人のことを考えてプレゼントをしたいものです。
マーケティングにおけるペルソナも、これと近いものだと考えることができます。不特定多数を見て作られた商品よりも、1人に向けて作られた商品のほうが喜ばれるし選ばれる、という理屈です。
マーケティングでペルソナを必要とする理由
一方で、疑問も浮かびます。私がまさにそうでしたが、「99人に刺さらない商品より50人に刺さるほうが売れるしいいのでは?」と思ってしまいました。しかし、ここが恋愛とマーケティングの違いといえます。マーケティングでは本当に1人にしか売れないのでは問題であり、たくさんの人に売れないとビジネスになりません。
100人中50人に刺さるケースを考えてみます。ふんわりと市場をカテゴリ分けし、だいたいこの辺の人らに受けそうだなという商品を作りました。では、この商品は100人中50人に売れるのでしょうか。
例えば、お店にその商品を置いて、100人が来店してくれたケースを考えてみます。このとき、そのうち50人はその商品を見て「へぇ、よさそうじゃん」と好感を抱くでしょう。しかし、この商品が売れるかどうかはまた別問題です。
みなさんもお店へ行って、商品を見て「へぇ、よさそうじゃん」と思うことはわりと多いはず。しかし、そこから「じゃあ買おう」となるのはかなり少ないでしょう。つまり、100人中50人に刺さるように作った商品は、「よさそうじゃん」のラインを超えることはできないのです。
そこで、ペルソナの出番です。いったんペルソナの復習ですが、ペルソナでは性別・年齢・出身・居住地・職業・収入だけでなく、これまでの学歴や職歴、何が好きか、どういうライフスタイルか、何に興味があってどうお金を使うのかなど、かなり細かいところまで設定します。ただしフィクションの登場人物とは違い、実際にどこかで生活していそうな人物像でなければなりません。
このペルソナの生活の中で、どういうときに必要とされるのかを考え、商品を設計します。また、マーケティング施策はこのペルソナと効果的に接触できる方法で打ちますし、Web記事はこのペルソナが読むことを想定して書きます。
こうして作られた商品は、「へぇ、よさそうじゃん」のラインを超えることができます。なぜなら、その人のことを考えて作られた商品だからです。
ここまでの話だと、設定されたペルソナと相当近しい属性・生活の人には刺さるだろうとわかりますが、まだ十分には売れなさそうです。私もわりと長い間、このことを疑問に思っていましたが、自分に身近な例を考えてみるとなんとなく見えてきます。
ペルソナのいい例 / 悪い例
ライターとして普段もわりとマーケティング視点で生活しているせいで、見るもの見るものマーケティング的な見方をしてしまう悪い癖が私にはあるのですが、そんな悪癖のセンサーに引っかかったいい例と悪い例があるので紹介したいと思います。
なお、特定を避けるためにかなりディテールを変えていますが、いずれもテレビCMの例です。テレビCMもマーケティング施策の一環であり、商品が売れるためにはペルソナを想定する必要があります。
悪い例:どんな人でもご相談ください!
商品というよりはサービスですが、困りごとを解決するタイプのサービスのCMがありました。ざっくりいえば、いくつか例を紹介しつつ、どんな人でもご相談ください!と締める構成のCMです。もしかしたら、CMとしてはよくある構成かもしれません。
このCMは、具体的な例をいくつか挙げてはいたものの、100人中50人に向けたCMだと感じました。テレビCMなので単純接触効果は高いでしょうが、それ以上の成果はおそらく出ないでしょう。問題は、「どんな人でも」の部分です。
このCMの業態も関連してくるため、それを伏せて説明するのが難しいところですが、「そのサービスを利用すれば問題が解決するタイプ」ではなく、「そのサービスを利用することで満足のいく結果が出るかはケースによるタイプ」のサービスでした。そのため、「どんな人でも」といわれても、じゃあこの会社さんにお願いしようかなとはなりにくいのです。
いい例:こんな人はぜひ利用してね!
ではいい例はどうだったかというと、悪い例のサービスとは業態こそ違うものの、「そのサービスを利用することで満足のいく結果が出るかはケースによるタイプ」のサービスでした。一方で、その構成は人をスタートにしており、「こういう人はぜひご利用ください」という構成です。
このCMでも、全体を見てみると「どんな人でもご利用ください」というメッセージにはなっていました。ただし、メインの軸となっていたのはCMの登場人物を中心としたストーリーであり、サービスを利用することでどんな結果が得られるのかが明確でした。この登場人物がまさにペルソナであり、ペルソナ1人に向けて作ったいいCMだといえます。
ここからがミソです
いい例のCMは、登場人物を見る限り、ターゲットは40代くらいの女性のようです。私は30代男性ですので、ペルソナにかすってもいないどころか、ふんわりとしたターゲットからも外れています。しかし、「仮に似たような状況になったらこの会社さんのサービスを使いそうだな」と感じたのです。
実際にはどうかわかりません。CMのストーリーと似たような状況になったとき、そのときの直前に見たCMやその他広告に引っ張られるかもしれませんし、いくつかの同業者を比べてみるかもしれません。しかし、このいいCMの会社はいい印象として残っているため、可能性は高くなるでしょう。
なぜいい印象として残ったのか、それはCMのストーリーを通してサービスを利用したときのいい結果が想像しやすかったためです。想定していたストーリーは40代女性のものだったとしても、結果が想像しやすいと「自分だったら」と置き換えることも容易です。私は悪癖によって「これはナイスなペルソナだ」みたいに考えてしまってちょっと自分が嫌になるまでセットですが、きっといい印象を抱いた視聴者は多かっただろうと思います。
この点、悪い例のほうは、「どんな人でも相談できます」という点を推しすぎるあまり、いい結果を想像するのが難しい内容でした。どんな人が来ても満足のいく結果を提供します、というサービスへの強い自信があるならすごいことですが、それをそのまま言っても伝わるとは限りません。
なお私は、どちらかというと悪い例のほうがターゲットでした。しかし、実際にCMが想定するシーンになったとき、この会社さんを選ぶかどうかはちょっとわかりません。
ここまで見てみると、CMにはストーリーがあればいいかのように見えますが、これは商品・サービスによります。例えば、「そのサービスを利用すれば問題が解決するタイプ」のサービスであれば、「どんな人でもご相談ください」がペルソナに刺さることもあるでしょう。
ようは、ペルソナを設定した上で、そのペルソナは普段どんな生活をしているのか、どんなときに自社の商品・サービスを必要とするのか、いつどんな形でアプローチすると感情がいい方向に動くのかを考え、商品・サービスを設計し、マーケティング施策を打っていくことが重要です。
まとめ:ライティングでもペルソナは重要
私はライター畑の人間で、このブログを訪れている方もライターやそれに近しい職業の方が多いのかなと推察していますが、Web記事のライティングも同様です。その商品・サービスに関する広いプロジェクトの中で、共通のペルソナを共有してもらえるかは案件次第かと思いますが、ライティングする際は「どんな人がどんなときにどんな目的でこの記事を読み、どんな結果を期待し、また自身はどんな結果を提供できるのか」を考えて記事を書くようにします。
ライターがわざわざ詳細なペルソナを作る必要はないですが、「こんな人がこんなことに困っていそうだな」と想像するだけでもかなり違うでしょう。1人のペルソナに向けるということは、間口を狭めてしまうのではなく、実際の生活の中に自然に寄り添うものです。そういった商品・サービス、マーケティング、コンテンツはそのペルソナの何かの属性に引っかかる人にも刺さるので、結果として広い人々に売れることになります。
100人中50人に刺さりそうなものは、自分たちではなんか刺さりそうだなと思っても、今ふわっと想像しているなんとなくな人物はこの世に存在しません。存在しない人に向けて作った商品・サービス、マーケティング、コンテンツは、誰にも刺さらないので、「へぇ、よさそうじゃん」のラインを超えることができないわけです。