メリットとベネフィットと顕在ニーズと潜在ニーズとDDとガチ恋
こんにちは、よしてるです。
本記事を書くにあたって「DD」について検索したら、「デュー・デリジェンスとは……」が出てきて吹き出してしまいました。
冒頭でまず「DD」と「ガチ恋」について簡単に解説しようと思いますが、「DD」は「誰でも大好き」を意味する推し活用語で、アイドルグループなどにおいてメンバー全員を均等に応援したり、複数のグループを応援したりすることを指すそうです。一方の「ガチ恋」では、特定のアイドルメンバーやタレントを好きになるあまり、恋心を抱いてしまいます。
メリットとベネフィット、顕在ニーズと潜在ニーズもそういうことです。
目次
記事で「ベネフィットを書きなさい」と言われてもわからなくない?
日々記事作成に勤しんでいるライターのみなさんは、きっと「記事ではメリットではなくベネフィットを書きなさい」と言われて困惑した経験があるのではないかと思います。もしまだ「ベネフィットうんぬん」を通っていないのだとしたら、ぜひ今困惑してみてください。
かくいう私も「メリットとベネフィットと何が違うんだ」と困惑したクチです。別にメリットでもいいのに、なぜベネフィットを書かないといけないのでしょうか。
しかし、ベネフィットをしっかり書けた記事の価値は、そうではない記事と天と地ほどの差があります。ベネフィットを伝えることのできる記事は、余るほどコンバージョンを叩き出してしまい、それを書いたあなたは引く手あまたの大人気ライターとなることでしょう。
メリットを伝えるだけの記事は何も生まない
本題に入ろうと思いますが、世の中にはメリット・デメリットを解説した記事が星の数ほど溢れています。ライターの皆々様も、きっと指にタコができるほど「メリット」「デメリット」と打ち込み、解説記事を書かれてきたのではないでしょうか。
ここであえて強く書かせてもらいますが、メリットを伝えるだけの記事は何も生みません。
Web記事はペルソナに向けて書くことが重要
少し脱線するように見えますが、関連性が高く重要な要素として「ペルソナ」について取り上げてみます。
辞書的には「仮面」を意味する言葉ですが、マーケティングにおけるペルソナとは、商品・サービスを提供したい対象として具体的な人物像を設定したターゲットを指します。「30代・女性」のようにふわっとしたターゲティングではなく、「年齢・性別・家族構成・住所・職業・趣味・休日の過ごし方」のように細かく設定します。このペルソナは想像だけで作ってはならず、市場調査や顧客調査などを経て「本当に生活していそうな人物像」を作り上げます。
ペルソナを設定する意義は、顧客目線で商品・サービスを作ったり、それを提供する体制を整えたりすることにあります。
例えば、私よしてるがそのままペルソナだった場合、休日にはよく何かしらの撮影に出かけて、新しい写真の表現を求めてレンズやアクセサリーの情報を見ていますので、レンズメーカーやアクセサリーメーカーは「これを買うとこんな写真が撮れるよ!」というのを訴求して商品ページ・LP・コラム記事を作成するといいでしょう。そうすると私は「そんな写真撮ってみたい!」とホイホイ釣られて、今月の食費も大変なのにポチってしまうのです。
さてこの場合、「これを買うとこんな写真が撮れるよ!」は、果たしてメリットなのでしょうか?
「こんな写真が撮れるよ」はベネフィット
ここでメリットとベネフィットの話に返ってくるのですが、「これを買うとこんな写真が撮れるよ」はベネフィットです。
Web記事で超多用される「メリット」は、日本語に訳すと「長所」となり、一方の「ベネフィット」は「利益」となります。似たような言葉に見えますが、長所は商品・サービス視点の話で、ベネフィットは顧客視点の話になり、この点で大きな違いがあるのです。
カメラのレンズでメリットを訴求するとしたら、「画質がいい」「よくボケる」「小さい」「軽い」「あれやこれやの機能がついてる」などがあります。これらは確かに長所ですので、レンズを売りたいときにはもちろん押し出してもいいのですが、注意したいのは「誰に言うときも同じようにしか言えない」ところです。
例えば、「よくボケる」というメリットがあったとき、これを裏付けるカメラのスペックとして「F値」というのがあります。ちなみに、F値は小さければ小さいほどよくボケます。ここで「F値1.4」というスペックがあったとき、書けるのは「F値1.4」だけであり、1.2とか書いてしまうと虚偽になってしまいます。
よくボケるというのは確かにメリットですが、私よしてるに売るにしても、カメラ歴30年の大ベテランに売るにしても、スマホからステップアップしたい女子大学生に売るにしても、同じことしか言えません。果たして、このレンズは売れるのでしょうか。
スマホからステップアップしたい女子大学生に売りたいなら、「スマホよりボケてエモい写真が撮れるよ!」という訴求をするといいかもしれません。
カメラ歴30年の大ベテランに売りたいなら、「このレンズのMTF曲線はこうで開放時の中央解像度はこうで周辺減光はこのくらいで樽型歪曲はほとんどなくてフォーカスブリージングは……」となるでしょう、たぶん。
私に売るなら、「こういう写真(具体的な作例付き)が撮れるよ」となります。2024年はこういう訴求に釣られて3本も新レンズを買ってしまいました。
これら3つの訴求文句こそ、ベネフィットであり、Web記事などのマーケティング媒体で押し出していくべき情報です。
メリットだけでなくベネフィットが必須
カメラのレンズについて紹介する記事を書くとき、「メリット①!F値は1.4なのでよくボケます!」とだけ書いても誰にも刺さらないことがわかっていただけたのではないでしょうか。これはあくまで商品としての長所であり、その性能が必要かどうかは人によって変わります。
例えば、あなたは店舗に勤める店員で、レンズの購入を検討しているお客さまが相談してきた……というシーンを想像してみてください。しかし、1人のお客さまが目の前にいるのに、お店にいる全員に向けて「F値は1.4なのでよくボケます!」と声を張り上げるのです。これがメリットだけを書いた記事です。
考えなければならないのは、そのお客さまがどういう人で、何に悩んでいて、そのレンズにどんな期待をしているか。いい店員であれば、普段どんな写真を撮っているのか、これからどんな写真を撮りたいのかを聞いたり、会話の端からお客さまの機材知識レベルを探ったり、お客さまの想定していない効果や性能を伝えたりして、そのお客さまがどんなベネフィット(利益)を得られるかを丁寧に伝えるでしょう。
Web記事においても、やるべきことは基本的に同じです。もちろん、メリットを書いていけないわけではありません。今や「メリット」という言葉は調べる側にとっても親和性の高い言葉なので、検索から来てもらうというSEO的な意味でも「メリットを書く」ことは必要でしょう。
しかし同時に、記事内ではベネフィットもあわせて訴求していくことが重要です。もしペルソナが私なら、それは店舗に相談に来たお客さまが私ということですので、作例を見せて「こんな写真が撮れます!」というベネフィットを伝えるのがいいですね。ペルソナが女子大生なら、スマホよりエモいことを伝えます。ペルソナが大ベテランなら、MTF曲線や以下略。
つまり、メリットは「DD(誰でも大好き)」であり、ベネフィットは「ガチ恋」なのです。
顕在ニーズと潜在ニーズも同じ
マーケティングに関わるどんな施策でもペルソナがあったほうがいいのはそうなのですが、そうはいかないことも多いでしょう。例えば、「30代・女性」のようなふわっとしたターゲットのみを設定したり、読者のニーズだけを設定したりというケースがあるかと思います。
この「読者のニーズ」については、さらに「顕在ニーズ」と「潜在ニーズ」に分けることがあります。「ウォンツとニーズ」と言うこともありますが、意味合いとしては同様です。この分け方も、メリットとベネフィットと同様に、「DD」と「ガチ恋」なのです。
顕在ニーズ=表に出てきているニーズ
「顕在ニーズ」とは、「表に出てきているニーズ」を指します。表に出てきているので、このニーズは周りから観測できます。
もう少し具体的にいうと、「F値1.4のレンズを紹介する記事」を書いたとき、きっと「レンズ ボケる」「レンズ ボケ メリット」のようなキーワードからの流入が多くなるでしょう。そこで私たちは、「きっとこの読者はよくボケるレンズを探しているんだろう」「レンズがよくボケることによるメリットを知りたいんだろう」と推測できます。これが顕在ニーズです。
潜在ニーズ=それぞれが心の憶測で求めている“得”
一方の「潜在ニーズ」とは、「表には出てこないニーズ」を指します。もう少し具体的には、心の奥底で求めている「得」「気持ちよさ」「満足」「危険の回避」であり、本人自身が認識していない場合もあります。通常、顕在ニーズと違い、周りから観測できません。
私よしてるの場合だと、私はF1.4のよくボケるレンズを求めるにあたり、「風景写真って普通はボケないんだよな」「でもボケを駆使した風景写真を撮れたらカッコいいよな」「その写真をInstagramに上げたら『他とは違うぜ』って気持ちよくなれそうだな」などなど考えていました。
なので、ボケ具合がわかるいろいろな作例を見まして、これなら気持ちよくなれる!と思ってまんまと新レンズを買ってしまったんですね。
つまり顕在ニーズと潜在ニーズとはなんだ?
マーケティングにおいて顕在ニーズを設定した場合、それはひとまずのゴールを指します。つまり、これまでの例でいうと「F値1.4のレンズを購入してもらう」ですね。Web記事の作成においてもこれを目指したいので、メリットを訴求するなどして、読者の購買意欲を刺激していきます。
一方で、それだけだと誰に対しても同じ言葉を投げかけてしまう「DD」状態になってしまいます。なお誤解なきように伝えておくと、推し活における「DD」は決して悪い言葉ではなく、あくまで「推しの対象が広い」ことを指すニュートラルな言葉です。ただしマーケティングにおいては、DDだと誰にも刺さらないということです。
ここで重要になるのが潜在ニーズで、ひとまずのゴールにたどり着いてもらうためにはどう伝えればいいのか、というヒントを潜在ニーズから得ます。私に売るのと、大ベテランに売るのと、女子大生に売るのとでは、ゴールは同じでもアプローチはまったく異なってきます。
ただ、潜在ニーズは表に出てこないニーズと紹介しました。私もまさか、店員さんに相談しにいくときに「Instagramで気持ちよくなりたいんです」とは言わないですし、「Instagram 気持ちいい レンズ」と検索もしません。表に出てこないからこそ難しいのですが、だからこそ入念な市場調査や顧客調査が重要となるのですね。
さらにいえば、顕在ニーズは「ひとまずの」ゴールと書いたのですが、マーケティングではさらに「お得意さま」になってくれることを目指したいところです。どうすればお得意さまになってくれるかまで考えると、やはり潜在ニーズを知ることが重要になってきます。
つまり、潜在ニーズを知ることで、その人の本当の望みを叶えられる「ガチ恋」になれるのです。
まとめ:記事作成ではガチ恋していこう
本記事では、「メリットとベネフィット」あるいは「顕在ニーズと潜在ニーズ」を「DDとガチ恋」に無理やり当てはめて解説してみました。
重ねて補足すると、DDもガチ恋も推し活における「推し方」の一種であり、優劣を指す言葉ではありません(揶揄、あるいは自虐で使われることも多いですが)。ただ、マーケティングにおいては「多数に向ける」ことと「1人に向ける」ことで上手いこと当てはめられるかなと思い、テーマにしてみた次第です。
「記事にメリットを書くこと」や「顕在ニーズを考えて記事を書くこと」は、とてもとても簡単です。しかし、それだけで終わってしまうと、マーケティングにおいては誰にも刺さりません。
とても難しいことですが、「ベネフィットを書く」「潜在ニーズを考える」までやらなければ、その記事は本当にリーチしたい相手まで届かないでしょう。
なお本ブログにおいて、よしてるは以下2つの記事も寄稿しています。
たくさんの人に買って欲しいのになぜペルソナ作って1人に向けるのか
記事の作成・更新において常に立ち返りたい「クエリ理解」について
「なぜペルソナ作って1人に向けるのか」記事はペルソナ設定を恋愛にたとえた内容、「クエリ理解」記事はキーワードと比較したクエリの意味について取り上げた内容となっていますが、言いたいことは本記事とほとんど同じです。
記事作成やマーケティングについての理解を深めたい場合は、ぜひ合わせてごチェックください。